2011年も11月に突入です。今年もあと2カ月。東京もだいぶ秋らしくなり、鍋が食べたいと思うような気候になってきました。
さて今月の11日、つまり2011/11/11という「1」の続く縁起の良い(?)日に発刊される、ミルトスの新刊
『マスコット ナチス突撃兵になったユダヤ少年の物語』をご紹介しましょう。
この本について、まず最初に言っておきたいのは、正真正銘の実話であるということです。2007年に原書が発刊された時、「作り話じゃないのか?」と捏造疑惑まで出るほど、話題騒然となったとか。それくらい、信じ難いお話なのです――。
英国オックスフォードで学ぶ著者マークの元に、父が実家のオーストラリアから突然やって来る、1997年から物語は始まる。父が何のために訪問してきたのか分からない息子は、割り切れない思いで1週間を共に過ごす。
父親は何か言いたそうだが、何も切り出してこない。父と息子にはありがちな話だが、遠路はるばる尋ねてきた目的は何なのか、マークには皆目見当がつかない。
父はのらりくらりと会話を交わすだけだが、遂に意を決したのか、息子に自らの過去を話し始めた。そこで語られたのは、息子が今まで聞いたこともない話ばかりだった。
そしてある2つの言葉にたどり着く。覚えていた父親自身にも分からない謎の言葉……。
子供時代のことだけに父親の記憶も定かでなく、そしてこの2つの言葉が意味するところもよく分からない。ほとんど手がかりのないまま、2つのキーワードを胸に息子は父と一緒に過去を探す長い旅に出ることになる。
――っとまあ、出だしはこんな感じです。2人が謎に包まれた真実を探し続けていく展開は、さながらミステリーを読み解いていく感覚で、読者も一緒に考えさせられます。
今春に発刊した
『ハンナの戦争』もそうでしたが、ホロコーストを不思議に生き延びた人の物語は、いろいろな人に助けられ、そして見えない何かに守られていたとしか思えないような、奇跡としか思えないお話です。
ホロコーストの生存者も高齢になった今、このような証言を聞き出せる最終時期に入ったことでしょう。そのあまりにも過酷で悲惨な、葬り去ってしまいたい忌まわしい記憶を、半世紀以上経った今、ようやく重い口を開いて語れる時が来た、とでも言うべきでしょうか。
しかし本人にとっては、語ったところで過去の心の傷や葛藤が解決するわけでもなく、むしろ辛い過去が甦ってくるという厳しい現実と向き合わねばなりませんが……。
本書は歴史的資料としても非常に貴重なものです。
『マスコット ナチス突撃兵になったユダヤ少年の物語』、ぜひご一読ください。